23万台を超える台数を製造された7代目991の911。2011年に発表され、911シリーズの累積製造台数の100万台という記録をこの991モデルで迎え、歴史と人気が伺える。自然吸気エンジン最後の「911 4GTS」が入庫。
991は先代の997と比較して、90%を超える部品を刷新。革新的なアルミニウム、スチールの複合材料で作られた軽量ボディは、前世代よりも「軽くなった」初めの911であった。マグネシウム合金までもが使用された。
その軽量化された重量は、剛性を高めつつ、60kgの軽量化を図り、997と比較し車高は変わらずワイド&ローに進化。ホイールベースの延長はレース部門からの要求で延長され、なんともポルシェらしいストーリーを持つ。
外装部品は、先代モデルの996、997では不評だったケイマン/ボクスターとの部品共有はこのモデルから見送られ、外装については991専用の部品が使用される。(機関類等は一部供用されている)
エンジンの搭載位置は、変わらず「RR」とボディの後方にフラット6を搭載するが、ホイールベースの延長に伴い、ドライブシャフトとトランスミッションの位置が最適化された。
911らしくないとの声が上がるほど、全体的な991としての乗り味は、リアの安定性が向上し、997以前のモデルとは別物、人によってはRRを感じさせない程に進化した。
ホイールベースの延長によって、細かな上下運動の振動が抑えられたことにより、更に上質な乗り心地と直進と高速コーナーの安定性が大きく増したといわれる。それ程の大きなモデルチェンジだったのがこの991である
エンジンは、997のエンジンをベースに開発され、通常のカレラのエンジンシリンダーの内径を向上させ大排気量化を実施。ストローク量は変わらず、高回転まで気持ちよく回るエンジンを搭載している。
GTSで搭載されるエンジンは、そのエンジンを更に改良を施し、吸気側のカムリフト量を0.7mm増やし、強化バルブスプリングへ変更、吸気ポートの内壁にはポリッシュ加工を施し、吸気の流れをスムーズ化している。
最近のダウンサイジングターボエンジンでは、ECUセッティングで様々な出力にバラエティーを持たせる事は簡単だが、GTSに搭載されるエンジンには、一般的には考えられないチューニング、「メカチューン」が施される。
こうしたチューニングが施されたGTSのエンジンは、出力の高回転化を伴い30馬力、カレラよりも高出力化となっている。この30馬力の高出力化の為に、ターボエンジンでは考えられない手が施される。
自然吸気エンジンは、ドライバーの操作に従順に反応し、その素直さに加え甲高い排気音も魅力の一つ。高出力化も簡単ではないからこその魅力も加わり、最後の自然吸気エンジンと呼ばれた前期は未だに人気が高い。
新車オーダーの内、4台に1台がGTSモデルを選ばれたといわれている。カレラSの400馬力に対して、GT3が475馬力とほぼ中間に位置するスペックで、「普段使いの快適さ」と「スポーツ性」が両立する1台である。
そしてこのGTSでは、ヘッドライトベゼルをはじめとする様々なエレメントがブラックアウトされ、フロントマスクもGT3に近しい雰囲気が感じられる。更にカレラSではオプション設定だった装備も標準装備となる
アクティブヘッドライトシステムやスポーツエグゾーストシステム、センターロック式ホイール等がGTSでは標準装備となり、ボディもワイドボディで設定され、カレラにはない魅力が上げられる。
一般的に3,600ccのカレラであっても必要充分な装備、スペックを備えているのにも関わらず、GT3という上位互換の自然吸気エンジン搭載モデルまで様々なバリエーションが悩ましい911。
より高出力で、スポーツモデルありながら、街乗りでの快適性も備わったGTSに一定の人気が集まるのは理解しやすく、991では、最後の自然吸気だからこその魅力が更に上積みされたような1台。
ワインディングへ踏み入れれば、強力なトラクション性能と自在なハンドリング感覚が気持ちよく、どこまでも走っていたくなるようなフィーリングの1台。走りの低重心感はすさまじく、キビキビと山道をこなしていく。
4WDと耳にすると強いアンダーステアを思い浮かべがちだが、低速かつタイトなコーナーへのターンインや切り返しでは、2WDモデルよりも俊敏に感じられるほど、曲がりにくさ、アンダーステアは感じられない。
キレのいい変速が魅力のPDKとの組み合わせで、アップテンポで山道を駆け抜けると、スポーツエグゾーストシステムとレゾナンスフラップの開閉に伴う吸気音で更なる快感を体験できる。