「ボクサーエンジン」「ロードスター」の単語を組み合わせたボクスター。新型(983)はEV化が決まり話題となり、ガソリンモデルは見直され、再度人気が沸騰。3代目ボクスター「981 ボクスターS」が入庫。
3代目の981ボクスターは2012年のジュネーブモーターショーで発表され、以前のモデルと同様に991型の911と多くの部品を共有しながらも、各部をブラッシュアップされた6気筒ボクサーエンジンを搭載したモデル。
センタートンネル付近にはマグネシウムを使用し、ねじれ剛性が40%向上。先代比でホイールベースは、60mm延長、フロントは40mm/リアは18mmワイド化された。
全長は32mm長くなったものの全高は13mm低くなった上に、ボクスターSでは35kg軽量化された。サイドには大きなエアインテークが施され、これは911とのドアを共用しないことで、実現可能になったデザインの一つ。
電動オープンの幌のシステムもリニューアルされ、12kg程軽量化に繋がっている。開閉時間は約9秒で開閉が可能で、前モデルよりも迅速化され、ロックの操作も不要になり、オープンエアーをワンタッチで楽しめる。
ボクスターSのエンジンは先代と変わらない3.4Lのままだが出力は5ps向上し315psを実現。トルクは360Nmを発揮し、電動式のパワステやアイドリングストップ機能も搭載され省燃費技術も投入され、約13%の燃費改善を実施
オプションで装備された自動減衰力を調整するPASM(ポルシェ・アクティブ・サスペンション・マネジメント)もセンサーが4個に増やされ、よりきめ細かい制御ができるようになった。
僅か5psの向上にも関わらず、様々な改良が施された981型ボクスターはニュルブルクリンク北コースで7分58秒を記録し、987型ボクスターSよりも12秒早いタイムを確立した。
981ボクスターが最後のフラット6/水平対向6気筒エンジンと言われる所以は、2015年に発表された718ボクスターが4気筒の水平対向ターボエンジンを搭載し、ダウンサイジングターボエンジンを採用した。
981と982は一般的な視点でみれば、両者はマイナーチェンジ前後の関係であるが、モデル名と社内のモデルコードが変更されており、991.1→991.2等の表記になるが、モデルが変わったほどの変化があった。
この981と982(718)の大きな違いはエンジンで、水平対向6気筒事前吸気エンジンから水平対向4気筒ターボエンジンへ大きな変更を伴った。
またこの718以降のモデルでは、価格の入れ替わりが行われ、ケイマンとボクスターではボクスターの方が高い価格設定となり、911と同様にオープンボディはオプショナルな関係へとボクスターも昇華されていった
特にターボエンジンには、技術の結晶といって良いほど様々な技術を投入し、718ボクスターSには、可変タービンジオメトリを採用した。これは911ターボにも搭載されている技術の一つである
この機能は、ガソリンモデルでは、ポルシェの他に搭載例が無いほど難しい技術で、スポーツモード以上で、ターボラグを減らすために、アクセルオフ時にもスロットルを開放する技術を搭載している。
その為、718ボクスターに搭載されたターボエンジンは、ラリーカーの様に、ビンビン反応するターボエンジンらしからぬレスポンスを実現し、パワーとトルクも自然吸気フラット6を大きく上回るスペックを実現。
実際のスペックは向上しているものの、数字には表現しにくい回転フィールやエンジン、排気音の音色、気持ちよさは、は残念ながら981の自然吸気6気筒のフラット6に分があるといわれている。
これはポルシェに関わらず、昨今のダウンサイジングターボエンジンへ移行したモデルのほとんどで言われていることで、フィーリングと言われる人間の五感に訴えるものは自然吸気エンジンに旗が上がる。
もちろん最新の技術をたくさん搭載したターボエンジンも排気量を感じさせない程パワフルで、トップエンドまで回せば、無慈悲と感じるほどに速いモデルもたくさん登場している。
ただカタルシス的な爽快感、アクセルを踏み込んでいくにつれて、高回転にエンジンが回っていくにつれて、和音が澄んだ音、豊かで厚みのある自然なパワーフィールには、自然吸気エンジンにも魅力がある。
718世代のボクスター/ケイマンもGTS/GT4のスポーツモデルには自然吸気の4.0Lの水平対向エンジンが残されているものの、もっと素に、もっと気軽に楽しめるモデルとしては、981が最後のモデルとなるのでは