国産スポーツカーで代表的な車種の足回り構造を紹介

国産スポーツカーで代表的な車種の足回り構造を紹介

スポーツカーの代名詞シルビア!フロントサスペンションは「ストラット構造」

乗用車からスポーツカーまで様々な車種に使用されている構造として、「ストラット式サスペンション」は最もオーソドックスと言えます。シルビアを例にするとストラットタワー(エンジンルーム内ボディパネル)とナックルアームの2か所でショックアブソーバーを固定しており、特にスポーツカーの場合はピロアッパーマウントを取り付ける事でキャンバー角を自由に調整する事が可能となる利点があります。
また、この後に紹介するダブルウィッシュボーンやマルチリンク式サスペンションに比べて部品点数が少なく、コスト削減も意味もあり、自動車メーカーの多くはこのサスペンション方式を採用しています。



2つの羽の骨!?ダブルウィッシュボーン構造を持つDC2インテグラ

2017年現在で採用している車種は少なくなって来ていますが(前述のようにコスト削減が理由のひとつ)、EGシビック・DCインテグラなどホンダが特にスポーツカーに力を入れていた時代にスポーツカーに限らず様々な車種でダブルウィッシュボーン構造が使われていました。スポーツカーであればダブルウィッシュボーンにする事によって、サスペンション構造がストラット方式に比べて大幅に向上する為採用しています。
足回りがしっかりすると、結果としてサーキット走行などをした時に安定して旋回する事が可能となります。一般車の場合はそのような事は通常しませんが、サスペンション剛性が上がりますので乗り心地が良くなります。
ストラット方式とダブルウィッシュボーンでは何が異なるのでしょうか?ダブルウィッシュボーンの場合はショックアブソーバーの上部と下部でアームによってストラットタワー・アッパーアーム・ロアアームの3点でショックアブソーバーを支えます。その為、スポーツカーとして理想的な足回り構造となっています。

シルビア系のリアサスペンションで採用!マルチリンク式サスペンション

シルビアやスカイラインを始めとする日産黄金時代を支えたのが「マルチリンク式サスペンション」です。日産自動車がホンダ技研と異なる足回り構造にしているのは明らかですが、後輪駆動車の特性を生かす為の足回りにされています。
シルビアもスカイラインもフロントサスペンションがストラット方式であるのは前途のとおりですが、リアに関しては駆動輪であるリアで路面に対してしっかりとトラクションを掛ける事ができる構造にする必要がありました。そこで、リアのみダブルウィッシュボーンより1本アームを追加して剛性を高めたマルチリンク式サスペンションを採用しています。もしもリアサスペンションの剛性が不安定であれば、しっかりと路面にパワーを伝える事ができずに満足に走行する事ができない為です。



フィットから開発!FN2シビックTypeRで採用された究極のリアホーシング!

15年以上前から軽自動車のリアサスペンションはそれまで採用されていたストラット方式からホーシングへと変わって行きました。その流れでシビックの代わりになるコンパクトカーとして本田技研工業が初代フィットを開発した際、これまでの前後ダブルウィッシュボーンから変更を行いました。
フロントサスペンションをストラット方式、リアサスペンションを軽自動車などで採用されていたホーシングへと変更したのです。ホーシングとは自動車用語では車軸懸架と呼ばれ、独立懸架式サスペンションなどとは違い左右の足回りを連結させるサスペンションメンバーを介してショックアブソーバーとスプリングが独立して取り付けられています。ホンダを例に取るとフィットが登場した当初は軽自動車に使用されていたものとほとんど変わらない為、スポーツ性能はあまりよくありませんでした。
しかし、2代目フィットでスポーツグレードである「RS」を設定した事によってリアホーシングの剛性を上げ、車の性能がかなり良くなりました。当然、3代目フィットはさらによくなっています。フィットの足回りデータを元に同時進行としてイギリスで販売されていたシビックTypeR(FN2)ではホーシングでありながら、かなり走りに特化した構造に造り込まれています。
ホーシング単体で見ても剛性アップの為に溶接点数が非常に多く、初代フィットの頃のホーシングとは全く別物です。

まとめ

・ストラット方式は乗用車の他、シルビアやスカイラインなど、一世を風靡したスポーツカーにも採用されており、最もメジャーな足回り構造と言えます。しかし、ダブルウィッシュボーンやマルチリンク式サスペンションと比べると剛性が低いです。
・ダブルウィッシュボーンはバブル期のホンダ車に多く採用されており、スポーツカーであれば旋回性能を各段アップさせています。また、乗用車であれば乗り心地も良くなりいい事ずくめです。しかし、開発や生産にコストが掛かる為に時代とともになくなって行きました。
・マルチリンク式サスペンションは日産を例にするとシルビアやスカイラインのリアサスペンションに採用されていました。後輪駆動車には理想的な足回り構造で、トラクションをしっかりと掛ける事ができるよう工夫して作られています。
・ホーシングは基本的には軽自動車やコンパクトカーの足回り部品の生産コストを抑える為に採用されています。しかし、フィットで足回り開発を煮詰めた結果、シビックTypeRのように「走る為のホーシング」が生まれました。