全固体電池はEVの救世主となるのか?世界から注目される次世代型電池についてご紹介

全固体電池はEVの救世主となるのか?世界から注目される次世代型電池についてご紹介

全固体電池とは?実用化に期待がかかる次世代型電池

2017年末から2018年初頭にかけて、にわかに注目を集めているのが全固体電池です。繰り返し充電可能な「2次電池」と呼ばれる種類のひとつで、広く普及しているリチウムイオン電池に代わる存在として、世界中で開発が急ピッチで進められています。全固体電池は電気自動車(EV)の他、スマートフォンやウェアラブル端末に使用する次世代型電池として期待されています。

全固体電池はその名の通り、電解質に可燃性のある液体を使用しない2次電池のことです。電解質が固体でできているので、構造もより単純になり、リチウムイオン電池に比べて大容量化や低コスト化をはかることが可能になりました。次で詳しく見ていくことにしましょう。



全固体電池と従来からのリチウムイオン電池との違いは?

従来のリチウムイオン電池をEVに使用する際のデメリットは、以下の7つです。

①コストが高い
②容量が小さい(航続距離が短い)
③出力が小さい
④充電時間が長い(数時間以上)
⑤液漏れや発火・爆発の恐れがある
⑥気温が高い時は電解液が蒸発、気温が低ければ凍結の恐れがある
⑦寿命が短い

特に⑤については、安全性を第一とする車での使用には不向きと言わざるを得ません。ここで、全固体電池と比較してみましょう。

①リチウムイオン電池よりコストを下げられる
②容量が大きい。航続距離はリチウムイオン電池使用車の2倍以上
③出力が大きい。発進時や加速時に有利
④充電時間が短い。フル充電まで数分程度
⑤液漏れや発火の心配はなく、安全性が高い
⑥マイナス30度から100度まで、幅広い温度下で使用可能
⑦寿命が長く、充電可能回数が多い

安全性が高いことはもちろんのこと、航続距離が長くなることや、充電時間が極端に短いことは、ユーザーにとって特に大きなメリットです。

日本でも多くの企業が全固体電池の開発に注力!

可能性の高さから、まさに「夢の蓄電池」とも呼べる全固体電池は、実用化されればEVのみならず、世界中の身の回りの製品を一変させる可能性を秘めているため、多くの国や企業が多額の研究費を投じて開発を進めています。

日本では、テスラに円筒形電池を供給するパナソニックとトヨタが、2020年代前半に実用化予定の全固体電池について共同開発を検討しています。トヨタと関係の深いデンソー、ダイハツ、日野、スバル、マツダ、スズキとも、共同で開発を進めていく姿勢を打ち出しています。

また、日産やホンダもこの流れに追随する姿勢を見せていて、日産では2020年代後半に全固体電池の実用化を目指しています。EV以外の用途でも、TDK、日立製作所、村田製作所、東レ、日本カーリット、旭化成などの会社が開発に名乗りを上げています。



世界中で車載用全固体電池の開発競争が加速!

積極的に全固体電池に取り組んでいる、他国の企業に目を向けてみましょう。パナソニックと手を組むテスラはもちろんのこと、自動車技術大国であるドイツのダイムラー、フォルクスワーゲン、BMWの各グループでも車載用電池の開発を強化しています。バッテリーモジュール、バッテリーパック、制御装置は自社で開発し、最小単位であるセルについては外注して、数社の候補から性能の良いものを選ぶ、という場合が多いです。

韓国ではサムスンとLGが、少し変わり種なところではイギリスからダイソンが開発参入を発表しています。日本でもユニークな掃除機などで知られるダイソンは、2020年までにEVを開発することを発表。400人体制で研究を進めています。

まとめ

ここまで、全固体電池のメリットと、全固体電池を取り巻く急激な変化についてご紹介してきました。東京オリンピックが行われる2020年以降、全固体電池が本当に実用化されたら、車だけでなくスマートフォンやノートパソコンも全く異なるものに進化するかもしれません。

車はEV以外でも、インターネットとの常時接続して様々な情報サービスを利用する「コネクテッドカー」や「自動運転」など、多くの技術革新による転換期がすぐそこまで迫ってきています。より環境に優しく、安全に、かしこくなっていく自動車。全固体電池を得て、車は一体どのような形に進化していくのでしょうか。これから先も目が離せません!