ハコスカよ、永遠なれ

ハコスカよ、永遠なれ

あなたは「ハコスカ」を知っていますか?

「ハコスカ」って、なんスカ?と茶化したりすることは、この車にはちょっと失礼かもしれない。
日産スカイラインの「ハコスカ」(スカイラインとしては3代目にあたる)が登場したのは1968年。「C10型」と尊敬を込めてマニアが呼ぶハコスカは、富士スピードウェイでのスカイライン神話として今も語り継がれるレースの血脈を引き継ぎ、プリンス自動車と日産の合併後に誕生した注目のモデルでした。エンジンはプリンス製直列4気筒OHC1500cc。サスペンションは、フロントがマクファーソンストラットとコイルスプリングの組み合わせ、リアはリーフリジッド。当時の市販車としては贅沢な足回りであり、マニアックで、レースイメージを感じさせるメカニズムだったのです。

伝説の系譜

1964年に開催された「第2回日本グランプリ」。このレースにおいて、当時世界最強と言われていたポルシェ カレラ904GTSに、わずか一周とはいえ、プリンス スカイラインGTがリードを奪い、それがスカイライン伝説のはじまりでした。その伝説のプリンス スカイライン(S54B型)の血統を受け継ぎ、1968年にデビューしたのが直列4気筒のC10型スカイライン。箱型のボディスタイルから、後にハコスカと呼ばれる名車の誕生です。そしてこの年の8月、直列6気筒のGTが追加されました。そのボディデザインは、流麗で、その後のデザインレジェンドとなるサーフィンライン(サーフライン)と呼ばれる特徴的なボディプレスは、カーマニア憧れの的となりました。



男たちの情熱がレジェンドを生み出す

櫻井眞一郎という名前をご存じでしょうか。スカイライン生みの親と呼ばれる頑固一徹の職人肌のエンジニア。プリンス自動車工業から合併後の日産自動車に勤務し、誕生から一貫してスカイラインと関わってきた男、まさしくスカイラインのキーマンです。彼がいたからこそスカイラインが生まれ、ハコスカのレジェンドも生まれたといえます。ホンダの本田宗一郎もそうであったように、よりよいものを追求し、よりよい車を生み出すことへ熱い情熱を燃やす男たちが、伝説を紡ぎドラマを生み出してきたのです。カーマニアと記者の間から生まれてきた「ハコスカ」という呼称。それがもたらした世界観は、その後のスカイラインのブランドイメージをより一層強烈なものにし、憧れと、さらなる伝説への期待を高めていったのです。櫻井の情熱と思いは、現在のスカイラインに至るまで脈々と引き継がれ、今も息づいています。

GT、そしてGT-Rの登場が、ハコスカのイメージを作った。

ハコスカのブランドイメージを確立したのは、やはりGTでしょう。1968年後半に追加されたGC10型は、直列6気筒エンジン搭載のGTモデル。S54型に搭載されていたプリンス製のG7型に代わって、日産製の直列6気筒2000ccエンジンが搭載されました。
足回りも、フロントは4気筒と同じマクファーソンストラットでしたが、リアはセミトレーリングアームとコイルスプリングに変更となり、4輪独立懸架となりました。これも、当時としては、非常にレーシーなセッティングで、クルマ好きの心をくすぐったのです。
そして、プリンス系技術陣によって開発された直列6気筒4バルブDOHC2000ccのエンジン(S20型)を搭載したGT-R(PGC10型)と1800シリーズ(PC10型)が追加され、伝説のイメージはさらに高められたのです。



ニックネームと個性的なデザインが、憧れをさらに高めていった

先述したとおり「ハコスカ」という名前は、日産側が名付けたものではありません。4代目のC110型は、CMで「ケンとメリーのスカイライン」というコピーが使われていました。そこから「ケンメリ」という呼び名が生まれたました。そして、4代目に比べてボクシーな箱型デザインの3代目を「ハコスカ」と呼んで区別したのです。「ハコスカ」デザインの大きな特徴は、最初にも書きましたが、ボディ下部を流れるように走る「サーフィンライン」です。フロントから貫かれたラインと、リアホイールアーチから続く2つのラインがプレスされています。その昔、高速道路でハコスカに鮮やかに追い抜かれた時には、このラインが目に焼き付いたものでした。

まとめ

日産自動車の前身である富士精密工業(プリンス自動車工業の前身)が、1957年に初代のスカイラインを作り、その後、プリンス自動車工業と日産自動車との合併後に生まれた3代目のスカイライン。その車が伝説の名車「ハコスカ」と憧れを込めて呼ばれるようになりました。その伝説の系譜は、1964年の富士スピードウェイで、一周とはいえ、ポルシェ カレラ904GTSを抜き去った時から始まり、脈々と受け継がれてきたものです。伝説のエンジニア櫻井眞一郎が作り、育て、レースで培われたテクノロジーを市販車に反映していったスカイラインのレジェンド。その伝説は、優れたエンジンとサスペンションなどのメカニズムによって生み出された走りと、箱型の個性的な外見デザインとによってさらに高められ、他に類を見ないものとなったのです。現代の車には、残念ながら、このような伝説を持つ車は、もはやなくなってしまいました。電気自動車の開発が世界的に加速する中、ガソリンエンジンもやがて消えていくのかもしれません。そんな時代だから、今こそ、この車にエールを送りたい。ハコスカ伝説よ、永遠なれ!