モータースポーツ生まれの技術、ミスファイアリングシステムとは
- 2018.01.11
- 車の知識
ミスファイアリングシステムって何?
別名アンチラグシステムとして、ランサーエボリューションなどラリーカーによく用いられますが、これはアクセルをオフからオンに切り替える際に発生するターボラグを解消し、加速を鈍らせないシステムです。過給器はエンジンの排気ガスを動力にしてコンプレッサーを駆動させ、エンジンに通常より多くの圧力を掛け、馬力を上げます。しかしカーブ侵入時や、ブレーキを踏んでから再度アクセルを開けても、その間に排ガスが無いためターボが可動せず、出力にムラが起きます。これを解消すべくタービン直前のエキゾーストマニホールド内でガスを意図的に燃焼させタービンの動力を作り、ラグを無くします。以上がメカニズムです。
エンジンとターボについて
エンジンの仕組みですが、インテークマニホールドから空気を流入し、フューエルインジェクターからガソリンが噴射され混合気となります。これが燃焼室に吸気され、ピストンの上昇によって圧縮されます。その際、点火プラグによって混合気が着火・爆発しピストンが押し下げられます。そして燃えた混合気がエキゾーストマニホールドに排出されます。
ターボは、排出されたガスがタービン内の風車(コンプレッサー)を回転させ、流入空気を圧縮しエンジンに送ります。排ガスは高温なので、タービンも赤熱するほど熱くなります。そして圧縮した空気も熱くなるためインタークーラーで冷却します。
ミスファイアリングシステムのメリット
モータースポーツにおいて重要なのがコーナーからの脱出速度です。早く加速状態に持ち込み直線でタイムを稼ぎたいところ。しかしアクセルを開けるもののターボラグによって本来の加速を得られないとタイムロスしレースで負ける原因になります。ここでこのシステムを使う事で瞬時の加速が可能になります。特にラリーやジムカーナのような加速減速が激しい走行には、このシステムは非常に有利です。ちなみに市販されていたランサーエボリューションⅢにこのシステムが標準装備されているのは、WRC出場の為です。レギュレーション上、市販車ベースでの改造がマストであるが故の措置でした。
ミスファイアリングシステムのデメリット
エンジンで燃焼中の混合気を燃えたままエキマニに排出し、さらに継続的に混合気を排出し続けるためエキマニとタービンが蓄熱し周囲が高温になります。市販車でこのシステムをするには(公道走行禁止ですが)熱害対策を施さないと室内が蒸し風呂になる、もしくはエンジンルーム周辺から出火する恐れがあります。無論レーシングカーには対策が施されています。またエキマニ内で燃焼しなかったガスはマフラーへ流れますが、高温状態のマフラーでガスが自然着火しパンパンという騒音を発生させます。これが続けばマフラーなど部品の寿命を削る事にもなります。
ミスファイアリングシステムを入手するには
ジムカーナなどスポーツ競技での使用は大いにメリットがあります。ターボ車なら導入可能で、ショップなどからアンチラグ対応のCPUなどが若干ですが販売されており、これを取り付ける事で対応可能です。ワイヤーハーネスなど一部部品の取り替えなどが必要になるケースもある為、部品費に加え作業工賃も必要になるでしょう。40万円前後を見積もっておけば無難です。
標準装備車を購入するのも一つです。ランサーエボリューションシリーズのⅢ以降にはこのシステムが備わっています。ただ公道では使うことが出来ない仕組みにされており、CPUの書き換え・ロック解除が必要になります。あくまでもサーキットやジムカーナ場でのみの使用にしましょう。
まとめ
ミスファイアリングシステムはレースの中で生まれた、タイムを削る為に必要な技術です。しかしエンジンの排気熱を利用したシステムなので、常にタービンを高温状態にしていまい、周辺部品はもちろん、エンジンそのものの寿命を縮めてしまうデメリットも持ち合わせています。それゆえ、部品交換サイクルが早く、お金のかかるモータースポーツだからこそ成立するシステムと言えます。また熱害による出火やマフラーから火を吹くなどの危険性、騒音問題から公道での使用が禁止されていることも忘れてはなりません。一競技に用いられる画期的システムとして認識しておくのが良いでしょう。