スバルの軽自動車はスバル製じゃないって本当?

スバルの軽自動車はスバル製じゃないって本当?

スバルブランドの起源は「スバル360」

スバルブランドの起源となったのは「スバル360」という丸っこい可愛い車両です。“アジアのフォルクスワーゲンとなるだろう”と欧米のメディアに取り上げられたそうですが、まさにその通りで1958年から1970年の12年間で約39万2千台も製造され、多くの日本人から愛されました。この車の登場が契機になって、各社が同クラスの軽自動車の開発合戦を繰り広げました。自動車大国、日本の基礎を作った車です。
今でもスバル360には根強い人気があり、スクラップされずに法定整備された車両が普通に取引されています。

スバルは軽自動車から撤退しているのは本当 ?

スバルブランドの起源となったのは、軽自動車のスバル360でしたが、スバルは軽自動車から撤退しているという話がよく聞かれます。結論から言うと、その噂は正しいです。2012年軽自動車の製造から完全撤退しています。
スバルは生き残り戦略として、2000年代以降、世界最大の車米国市場を重視してきました。米国では軽自動車は基本的には車道を走れません。州によっては「低速車」または「小型貨物車」として走れますが、これらは「自動車」とは別のカテゴリーのため、高速道路では利用できません。そういった状況ですので、まともに米国では販売できません。また、日本においても軽自動車は競争が激しく、開発しても売れるか分からない、売れても安価で利益率が低くあまり旨みがないです。ですので、選択と集中の結果、軽自動車から撤退することをスバルは決めました。



OEMでの販売

ここで重要なのは、スバルは軽自動車の製造からは撤退しましたが、販売からは撤退していない、ということです。つまり、軽自動車の販売は続けているのです。軽自動車を製造していないのに販売はしているのです。どういったカラクリかと言うと、他のメーカーに軽自動車を製造してもらい、それにスバルのロゴを付けて、スバル製品として販売しているのです。具体例を挙げると、スバル「ジャスティ」はダイハツ「トール」をオリジナルとしたOEMです。
ちなみに、こういった製造を他社に委託し、他社で製造した製品を自社ブランドとして販売することを、OEM(日本語では「相手先(委託者)ブランド名製造」)と言います。製造業では一般的で、車業界では軽自動車中心にOEMが良く見られます。例としてはトヨタの軽自動車「ピクシスメガ」はダイハツ工業の「ウェイク」です。更にトヨタの「ルーミー」に至っては、スバル「ジャスティ」と同じダイハツ「トール」がオリジナルです。

オリジナルとOEMのスペック比較

何人乗れるのかであったり、ラゲッジスペースの容量など、カタログスペック面の差異は、オリジナルとOEMの間に基本的にはありません。オリジナルとOEMでは、車の骨格であるボディが同一なので、乗れる人数を変更するなどの大きな差異を作りようがありません。
エンジンやドライブトレインにシャーシといった足回りのパーツも、オリジナルとOEMでは同じです。スバルから販売されているからと言って、スバル自慢の水平対向エンジンを搭載している訳ではありません。OEM元のエンジンです。従って走りについても、オリジナルとOEMの間に差異はありません。オリジナルよりスバルのロゴが付いている軽自動車の方が走りが軽やか、ということもありません。



オリジナルとOEMどっちを選ぶべきか

カタログスペックに差がないからと言って、まったく同じとは限りません。いくつか考慮ポイントがあるので、ご紹介いたします。
考慮ポイントその1は、販売店、ディラーです。契約から納品、更にその後乗っていて違和感が発生した際にもお世話になるディラーの評価は非常に重要です。
2つ目のポイントは、カラーやグリルのデザインを含めたエクステリアです。わずかな違いに思いますが、同じ赤系統色と言えども、ワインレッドのような深い赤もあれば、ピンクに近い淡い赤もあります。まったくの同色でも、ツヤがあるかないかで変わります。また、ロゴも配置されている車のグリルは車にとって顔です。これが異なると車の印象が変わります。カタログスペックが変わらない以上、ディテールで差異が付けられています。
そして一番の違いはメーカーのエンブレムでしょう。やはりスバルと言えば、インプレッサなど男性から支持されるモデルが多いですが、逆にダイハツはBoonやムーブなど女性をターゲットにしたモデルを得意としています。どのエンブレムの付いた車に乗るかは、セルフブランディングの一部と言えます。

まとめ

今回はスバルの軽自動車について、OEMであることをご紹介しました。すでにご紹介した通り、軽自動車が主な日本メーカーの輸出先であるアメリカでは販売できないため、集中と選択の一環として、軽自動車をOEM製品にしたメーカーはスバルに限りません。この流れはおそらく変わらないでしょう。今後もOEM製品が増えるはずです。メーカーエンブレムだけ異なる、そっくり軽自動車だらけになるかもしれません。
しかし、選ぶ楽しみがなくなったわけではありません。むしろ、大きな違いが付けられない以上、ディテールで差別化を図っています。同じに見えても、小さくない違いがあるので、より愛着が湧く方を購入すると良いでしょう。