自動車のデュアルクラッチ(DCT)ってなにもの? 今更知らないとは言えないAT車との違い

自動車のデュアルクラッチ(DCT)ってなにもの? 今更知らないとは言えないAT車との違い

まずは初歩編! 車のギアチェンジとは

デュアルクラッチについて見ていく前に、車のギアチェンジについて確認したいと思います。
車のタイヤは全く回転しないときもあれば、走り出すと状況に合わせて何百回転、更には何千回転とするものです。しかも、時速30kmで走っていたところから、高速道路の料金所でストップ。その後は高速道路で80kmへとどんどん速度が変わります。多少はエンジンの回転数の増減もありますが、それ以上に重要な役割をしているのは変速装置です。変速装置は内部にギア(歯車)を持ち、エンジンの回転数がそのままタイヤの回転数にならないように調整してくれるのです。
ギアチェンジとは、変速装置のギアを文字通り変えることです。小さいギアだとタイヤの回転数が上がる半面、馬力が落ちてしまい、大きいギアだとタイヤの回転数が下がる代わりに、馬力が上がります。

次は基礎編! 車のクラッチについてお勉強

続いてはクラッチです。普段からマニュアル車にお乗りの方には不要なお話だと思いますが、免許がAT限定の方だと全く意識していないこともあるため、確認していきましょう。
さて車のエンジンの回転数が、そのままタイヤの回転数にならないように調整してくれるのが、変速装置だとお話ししました。ではエンジンが動いている状況で、タイヤが止まっているときはどうなっているのでしょうか。答えは、エンジンの回転がタイヤの回転に伝わらないように“断線”させています。その“断線”や“接続”をする装置がクラッチです。
また、ギアチェンジする場合にも、エンジンの回転数をタイヤに伝えるギアが回っている最中に突然交換すると、ギアの破損、ひいては事故に繋がるので、一回一回断線しては接続する工程が必要になります。AT車はクラッチの操作も機械が自動的にやってくれますが、MT車の場合、クラッチペダルを使って運転手自身でやらなければいけません。そのためMT車の方がAT車に比べて運転が複雑なのです。



最後は応用編! 結局デュアルクラッチってなにもの?

スクラッチと変速装置について分かったところで、いよいよデュアルクラッチの正体に迫ります。
結論から言えば、デュアルクラッチとはスクラッチを二つ持った変速装置です。内部構造ですが、二つのスクラッチを仮にAとBに分けましょう。Aのスクラッチは1、3、5と奇数のギアと連動しているとします。この場合、もう一つのBのスクラッチは2、4と偶数のギアと連動しています。例えば、3速から4速にギアチェンジする場合、まずクラッチ切断があって、Aのスクラッチが切断されます。スクラッチが切断されるのと、ほぼ同時にギア3からギア4へと交換され、ギア4に連動しているBのスクラッチが接続されることになります。

デュアルクラッチのメリットは?

デュアルクラッチのメリットですが、人力のMT車、さらには従来からあるトルクコンバーターを利用したAT車よりも、二つのクラッチのおかげで速やかにギアチェンジが可能で、駆動効率の向上、つまり加速と燃費が良くなる点がまず挙げられます。
またクラッチペダルがなく、日本の国内法ではAT車の扱いを受けるので、AT限定の免許の方でも運転可能な点は見逃せないポイントです。ただし、『トルクコンバーターとデュアルクラッチではまったく機構が違う』ということは車好きなら覚えておきたいところです。



デュアルクラッチのデメリットは?

逆にデュアルクラッチのデメリットですが、デュアルクラッチ車はスクラッチとそれに繋がる変速装置が二つあるようなものです。二つある分、大きく重くなってしまいます。当然ながら複雑化した分コストも高くなり、AT車やMT車より高温多湿に繊細です。また、MT車の機構を進化させたものなので、走り出し時にガクガクするようなMT車の特徴が発揮されてしまう車種もあり、AT車から乗り換えると違和感があるかもしれません。

まとめ

デュアルクラッチ搭載車は国産車では、一部のスポーツモデルが中心でまだまだ少ないですが、欧州では徐々に広がりを見せてきています。2000年代中頃に登場した頃には上位モデルのみだけでしたが、最近では廉価モデルでも登場してきており、今後お目にかかる機会が増えるかもしれません。AT車と変わらない運転の容易さがありながら、MT車のような力強い走りができるため、今後も走りを追求するモデルを中心にデュアルクラッチ搭載車が登場するでしょう。