「バイエルンのエンジン工場」という名のブランド、BMW

「バイエルンのエンジン工場」という名のブランド、BMW

ドイツ・バイエルン州生まれの名セダン

『BMW』メルセデスベンツと並ぶドイツの高級車メーカーです。ブランドの名前でもあるBMW、「バイエリッシェ・モトーレン・ヴェルケ」という言葉の頭文字です。これは日本語で「バイエルンのエンジン工場」という意味です。50代から上の方には「べー・エム・ヴェー」とドイツ語で発音する方も多いと思います。そこには、ブランドに対する憧れと敬意が込められているように感じます。この年代のクルマ好きの人たちの間では、BMWへの憧れは「マルニ」と呼ばれた、「2002」(ニーマルマルニ)に代表されるコンパクトセダンよって始まったとも言えます。2Lエンジンを搭載した2002は、1602、1802の後を受け、1968年に発表された2ドアセダンです。今も続く伝統のキドニーグリルと丸目2灯のヘッドランプが特徴で、走りのBMWの伝説を生み出すイメージリーダーとなりました。

数多くのストーリーを秘めたBMWのブランドアイデンティティ

BMWのブランドデザインには、数多くのストーリーが秘められています。ブランドマークは、黒と青と白に塗り分けられたおなじみの円形のエンブレムです。青と白はBMWの生まれ故郷、ドイツバイエルン州の旗の色。そして円形を十字に分割し、青と白で塗り分けられた形は、その昔飛行機のエンジンも作っていたBMWの歴史を物語るプロぺラをモチーフにしたものなのです。ボディデザインでは、303から採用され今も継承されているフロントのキドニーグリルが大きな特徴です。キドニーとは腎臓のことですが、腎臓を並べたように見える形ということから、キドニーグリルと名付けられました。今もドイツのアウトバーン(高速道路)で、バックミラーにBMWのキドニーグリルやメルセデスのスリーポインテッドスターが見えたら、道を譲るとまで言われる強いアイデンティティを持つブランドデザインなのです。



心躍る、呼称

1960年代にBMWの伝説を生み出したのは、2002という2ドアセダンでしたが、その後のBMWの基本は、4ドアセダンです。今やおなじみとなっている番号で呼ぶ車種表記は、ABCでシリーズ名を付けている、メルセデスと並ぶ憧れのラインナップの名称となっています。番号が大きくなるに従って車格が上がる設定ですが、その始まりは1972年に発表された、モデルコード「E12」と呼ばれる初代の5シリーズです。最初に直列4気筒SOHCの2Lエンジンを搭載した520が発売され、その後上級セダンの3.0iと同じ直列6気筒3Lのエンジンを搭載した530が追加されました。ボクシーな4ドアセダンながら、斜めに切り落としたような逆スラントノーズの個性的なフロントマスク、そして滑らかに気持ちよく回るSOHCエンジンは高く評価され、走る歓びを味わえるBMWの名前を世に知らしめたシリーズの始まりとなりました。車種別の番号の後に18や20などエンジンの排気量を組み合わせる名称もここから始まりました。

シルキーシックスの誘惑

BMWのエンジンを語る時に、「シルキーシックス」という言葉が良く使われます。これは、静かに滑らかに回る直列6気筒エンジンのフィーリングを、絹のように滑らかだと表した言葉で、BMWを称える代名詞にもなっています。この6気筒エンジンの始まりは、1968年にメルセデスに対抗して生まれた大型高級車、E3でした。2.5L・150馬力と2.8L・170馬力の2つの6気筒ラインアップが設定され、一回り上の排気量のメルセデスと同等の性能を発揮したと言われました。サイズの長い直列エンジンを載せるために、ボンネットも長くしたのですが、これはその後のBMWの特徴にもなっています。北ドイツの真面目で保守的なポリシーを感じさせるメルセデスに比べて、BMWには南ドイツの、ややラテン的な個性があると言われますが、その乗り心地とアクセルを踏んだ時のスムーズに吹き上がるエンジンの回り方には、なんとも言えない心躍る官能的な味わいがあり、一度乗ると病みつきになるのです。V6エンジンやV8エンジンが隆盛を誇る中で、BMWは現在もこの直列6気筒にこだわり続けています。



コンパクトセダンの伝統

5シリーズや7シリーズといった大型上級車の一方で、コンパクトセダンはBMWの代表的なクラスとして、現在に至っています。2002の血統を受け継ぎ、70年代に欧州車としては大きなヒットとなり、BMWのブランドネームを一躍有名にしたのは3シリーズです。2002を継承し、さらに発展させたE21・初代3シリーズは、直列4気筒エンジンを搭載して75年に登場、その後77年に直列6気筒のモデルが発表されました。そして、後継モデルであるE30は、シンプルで筋肉質の洗練されたボディフォルムと、ツーリングなどの新たなラインアップも加えられたことにより、さらにその魅力を高め、BMWコンパクトセダンの人気を不動のものとしたのです。こうしたクルマ作りのポリシーを受けて、近年は1シリーズなどのコンパクトカーもラインナップに加わりましたが、企業スローガンでもある”Freude am Fahren”(走る歓び)という言葉を体現する運転する歓びを味わえる車、BMWのシンボルとして、3シリーズに代表されるコンパクトセダンは、大きな存在となっています。

まとめ

「バイエリッシェ・モトーレン・ヴェルケ(バイエルンのエンジン工場)」という言葉の頭文字をとって誕生したBMWブランド。「マルニ」と呼ばれた2002、そして3シリーズという個性的なコンパクトセダンを大きな飛躍のステップに、シルキーシックスと評される直列6気筒のエンジンなど、走る歓びを味わえる高級車として発展し人気を博してきました。キドニーグリルやプロペラをモチーフとした円形のエンブレムなど強いブランドアイデンティティを持った南ドイツ・ミュンヘン生まれの名車達。FRにこだわり走る歓びを追求したセダンを中心に、1シリーズ、3シリーズ、5シリーズ、7シリーズなど番号で車種を表記する独特のラインナップで、幅広い層に愛され親しまれています。官能的ともいえるドライブフィーリングを感じさせる直列6気筒等、まさしく”Freude am Fahren”(走る歓び)という企業スローガン通りの、走る歓びを愛し自らステアリングを握るオーナーのための高級車ブランドなのです。